2001年09月03日

因幡 正代
遺伝子とゲノム

 親から子に伝えられるさまざまな遺伝形質(特徴)が独立の因子で規定されているという概念は、19世紀後半にメンデル(Gregor J. Mendel)によるエンドウの交雑実験で確立した。それに遺伝子(gene)と名前がついたのは20世紀初頭のことである。19世紀後半には、メンデルの法則に代表される遺伝学だけでなく、細胞生物学も始まり、遺伝に関連した物質が染色体(chromosome)に存在することが見いだされた。そして、これも20世紀になって、染色体の全体(正確には半数体の染色体の全体)をゲノム(genome)と呼ぶようになった。今ではより概念的に、ゲノムとは、ある生物がもつ遺伝情報の全体として定義されている。ゲノムのなかで生命活動を維持するための機能的な部品を規定しているところが遺伝子である。ゲノムは遺伝情報伝達の単位であり、遺伝子は遺伝情報発現の単位だとも言える。

 染色体の本数は生物の種類によって異なるが、ヒトの場合は、人種や性別に関係なく、23対46本の染色体がある。染色体とは、DNAの二重らせんが、ループになったものである。 DNAは、糖に結合したアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という塩基がリン酸基を介して長鎖構造になったものである。 そのDNAの長い鎖の中には、遺伝子部分と、非遺伝子部分(ジャンクDNA)がある。遺伝子部分はDNA全体の3〜5%であり、この中に、生命活動に必要なタンパク質の設計図がある。

 「ヒトゲノム計画」とは、DNAの全ての塩基配列を解読しようとする計画である。 DNAの中には、約30億塩基対があり、その中に約10万種類の遺伝子が組み込まれている。ヒトゲノムの解析が完了すれば、遺伝子疾患の治療法開発だけではなく、人の進化の歴史を解明できるようになるなど、バイオ技術、生命科学に応用できるようにもなる。

 ヒトゲノム計画の中心となっているのは、アメリカ、フランス、イギリス、日本、ドイツなどの国々であり、国際協力によって進められている。これらの国をはじめとする世界各国が協力し、膨大な情報量を持つ ヒトゲノムの解析に励んでいる。これを統括しているのがHUGO(ヒトゲノム解析機構)であり、世界中のゲノム研究者たちによってつくられた国際組織である。解析されたゲノム情報はHUGOが中心となってコンピューターのネットワーク上で管理し、他の研究所が明らかにした結果を誰でもすぐ知ることができるようにしている。日本では、東京大学医科学研究所、東海大学医学部、北里大学理学部、慶應義塾大学医学部が協力している。


 次回は「ヒトゲノム計画の歴史」について解説したい。


表
以 上


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