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2001年09月19日
因幡 正代 |
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| ヒトゲノム計画の歴史 | ||
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近年の遺伝学研究の進展はめざましく、基礎分野の知見の蓄積と同時に、医薬、医療等への応用も進み、ビジネスにも結びつく応用技術となってきている。 遺伝現象の法則性を明らかにしたのはメンデルであり、そこでは既に遺伝的性質を担う単位、遺伝物質の存在が想定されていた。その後数十年の研究を経て、この遺伝物質の化学的本体がDNA(デオキシリボ核酸)であることが、1944年、エイブリーらにより明らかにされた。その後の研究はさらに加速しながら進み、1953年には、ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を発表した。1965年までには、DNAの塩基配列のどのような組み合わせがどのアミノ酸を決めているのかがすべて明らかになった。続いて1970年には、コラーナが活性のあるDNAの人工合成に成功し、1973年にはコーエンとボイヤーが、組換えDNA技術を確立している。1970年代には、イギリスのサンガー、アメリカのマキサムとギルバートにより、DNAの塩基配列決定技術(DNAシークエンシング技術)も確立され、組換えDNA技術とこのDNAシークエンシング技術の出そろった1970年代後半から1980年代中頃までは、遺伝子の構造や機能発現に関する新しい発見や生物学・医学上重要な遺伝子の発見が相次ぐこととなる。 1980年半ばに、ワトソン、ダルベッコらにより「ヒトゲノム計画」というアイディアが提出され、1988年に全米研究評議会がヒトゲノム研究構想を正式に打ち立て、1990年には米国立衛生研究所(NIH)とエネルギー省が共同でヒトゲノム計画の実施に踏み切った。当初の目標は2005年までにヒトゲノムの全DNAを解析し、全塩基配列を解明するというものであった。「ヒトゲノム計画」は国際協力により進められ、アメリカ:欧州(イギリス中心):日本=6:3:1の割合で分担し、解析を行っている状況である。1989年にはヒトゲノム計画に参加する研究者が集まり、国際的研究組織HUGO(Human Genome organization)も設立されている。 この間、アメリカのゲノム関連ベンチャー企業では、疾患の原因遺伝子などを特許化し、医薬分野のビジネスを展開しようとする競争が加熱する状況となり、1998年にはNIHの研究者であったクレイグ・ベンダーと遺伝子解析機器のトップメーカーであるパーキン・エルマー社が、ゲノム関連ベンチャー企業のセレラ・ジェノミックスを設立し、ヒトゲノムの全塩基配列を2001年までに解明すると発表した。これに対抗するため、NIHは当初の目標を2年前倒しして、2003年までにヒトゲノムの全塩基配列を解明すると発表した。継いで1999年にはアメリカのNIH、DOE(エネルギー省)及びイギリスのウェルカム・トラスト財団がヒトゲノムについての研究費の増額を決定し、全塩基配列の9割以上の領域について大まかに解析した草案を2000年春までに作成すると発表し、研究はますます加速されていった。 1999年12月には、日本、アメリカ、イギリスの共同研究チームが22番染色体の解読終了を発表したほか、2000年5月には理化学研究所ゲノム科学総合研究センター(GSC)など日本とドイツの研究チームが21番染色体の解読終了を発表した。この21番染色体は、ヒト染色体の中で最も小さく、新生児の0.1%がかかるダウン症の原因染色体としてよく知られている。これまでに127種類の既知遺伝子と、98種類の新規遺伝子の存在が確認されており、さらに遺伝子としての機能を持たない59種類の偽遺伝子(シュードジーン)が確認された。21番染色体に起因する疾患原因遺伝子は、アルツハイマー病、白血病などが知られていたが、今後さらにダウン症、躁鬱(そううつ)病、ガン(乳、膵臓、肺、喉頭など)などに関係する原因遺伝子が98種類の新規遺伝子から発見される可能性があると言われている。2000年1月には、セレラ・ジェノミックス社が、ヒトの全遺伝子の90%以上を解読したと発表している。 以上のとおり、「ヒトゲノム計画」は当初予定より大幅に前倒ししてゲノムの解析を終える予定であり、塩基配列決定、遺伝子特定からさらに次の段階、つまり遺伝子の機能解明へと進展してきている。1998年10月23日号のScience誌にNIHのヒトゲノム解析グループが発表した2003年までのゴールの一つには、既にヒトゲノムの多型(SNPs)解析があげられている。SNPsとは、Single Nucleotide Polymorphismsの略であり、ゲノム上の塩基配列の中で人種や個人(例えば健康な人と病気の人)の間で異なる塩基をもっている現象及びゲノム上のその部位を指している。多型とは塩基の変化が人口の1%以上の頻度で存在している場合を指し、多型は疾患感受性を明らかにするのに有用なマーカーとして有望視されている。多型研究の成果として、個人の特性にあった投薬、治療等のいわゆるオーダーメイド医療が可能になると期待されている。 ・細胞 ![]() |
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以 上 |
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