2001年10月01日

因幡 正代
ゲノム解析を可能にした技術

 1981年、日本では世界に先駆けてDNA配列決定自動化装置(シークエンサー)の開発を目指していた。この開発は、当時東京大学の和田昭允教授を中心に日立製作所、富士写真フィルム、セイコー電子などの企業と共同して開発を試み、自動化の基礎技術を確立した。

 従来、シークエンサーはガラス平板を2枚平行に並べその間にゲルを流し込み固まったあとにDNAサンプルをアプライし、電圧をかけてシークエンスを行っていた。この方法は準備に時間がかかることや、一日に調べられる塩基配列が少なかった。塩基配列を速く読む為に大きな電圧をかけると、熱が発生しガラス平板が割れるなど欠点が多かった。その為、新しいシークエンス技術が望まれていた。そこで登場したのが、キャピラリーシークエンサーという細いガラス管を使ったシークエンサーである。キャピラリーシークエンサーは、大きい電圧をかけても放熱できるので、高い電圧をかけることが可能になり、これにより非常に高速にサンプルを流すことができた。このキャピラリーシークエンサーの開発により、塩基配列解読が従来の平板法に比べ約10倍の速度になった。

 従来の平板法では流したサンプルにレーザーを当てて遺伝子配列を読むのだが、キャピラリーでは乱反射が起こり読めない。日立製作所ではキャピラリーの一箇所に切れ込みを入れて流れた液に直接レーザー光線を当て塩基配列を読む方法を開発した。この方法をシースフローという。しかし、残念ながら日立製作所ではこの技術を用いてシークエンサーを作ることができなかった。しかし、1998年3月、アプライド・バイオシステムズ(ABI)社は日立製作所と技術提携をして、キャピラリーを使ったシークエンサーがついに完成され、ゲノムのスピード解析が可能になった。

 1998年、ABI社は、スレイグ・ベンダー氏とともにセレラ・ジェノミクス社を設立し、同社が開発したキャピラリーシークエンサーを大量に使ってゲノムの解読を始めた。ベンダー氏はゲノム全体に超音波をかけてDNAをバラバラにし、シークエンサーで個々の遺伝子の配列を決めた。そしてコンピュータ処理によって、解析したDNA断片をつなぎDNA全配列を決定した。これが、「全ゲノムショットガン」と呼ばれる方法である。しかし、セレラ社では、300台の高性能シークエンサーを日夜フル稼動させ成果をあげているものの、全ゲノムショットガン法では繰り返し配列(類似配列)が存在するとコンピュータは間違ったアセンブリを起こし、全体的に間違った結果を生みやすいといった事から、精度に疑問をもたれているのもたしかである。


図:全ゲノムショットガン方式
以 上


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