2001年11月19日

植木 博士
「ほとんど孤立無援状態の小泉首相」

 道路公団民営化はじめ特殊法人改革をめぐる議論がヤマ場を迎えている。全国9,342キロ(うち供用済み6,861キロ)の道路整備計画見直しの是非について、自民党内抵抗勢力との対立が顕在化しており、小泉首相は道路公団に対する年間3,000億円前後の国費投入を来年度以降中止することを言明、一歩も譲らない構えを見せている。

 市場では、守旧派による抵抗がいよいよ本格化してきた、小泉首相は改革を断行する決意であり、場合によっては「解散カード」を切ることもありうる、との読みも浮上している。過去半年間、ほとんど掛け声倒れに終わってきた感のある小泉改革だが、ここにきて本当に拍車が掛かることになるのだろうか。

 残念ながら、このままではあまり期待を持てそうもないというのが筆者の見通しである。抵抗勢力との対立が目立っている特殊法人改革については、小泉首相のいさましい掛け声とは裏腹に永田町・霞ヶ関における勝負は既に決した感がある。担当大臣の石原行革担当相ですら敵前逃亡している状況では先行きは見えている。改革対象の157法人の約2割が「廃止・民営化」されるという見かけ上の華やかさはともかく、実質的な改革はかなり骨抜きにされていると言わざるを得ないだろう。道路公団民営化や住宅公庫廃止などのアドバルーンも、実質的敗北を隠すための「幻戯(めくらまし)」なのではないかと思えてくる。

 経済政策については、そもそもこれまで具体的な成果がほとんど挙がっておらず、守旧派と改革派の対立そのものが存在していない。強いて言えば、首相は「国債発行を30兆円以内に抑える」という公約にこだわり続けており、先の一次補正予算はかろうじてその枠内に収めたが、既に二次補正が当然視されていることに加え、景気後退に伴う税収減を考えると、公約の達成が既に不可能であることは火を見るより明らかだ。来年度についても、財務省は現時点で7兆円程度の歳入不足を見込んでおり、「30兆円」公約の達成はほぼ絶望的である。こうした現実にもかかわらず、「30兆円」公約を訴え続ける小泉首相の姿勢を「男らしい」と見るか否かは評価の分かれるところであるが、誰もが出来もしないと考えている公約を真顔で訴え続ける首相に国民は安心してこの国の舵取りを任せることができるのであろうか。

 小泉改革の現状を喩えるならば、「小泉首相と竹中経財相が2人で自転車に乗って、一所懸命ペダルをこいでいるものの、チェーンが切れており、全く前に進んでいないという光景を、他の閣僚や与党関係者が冷ややかな目で見つめている」ということになるだろうか。周りの人間が首相に救いの手を差し伸べようとしないのは論外にしても、小泉首相は既にチェーンが切れている(=閣僚が機能していない)という現実を直視し、必要な修理(=内閣改造)を行い、改革プログラムの具体化と実行に取り組むべきである。今こそ、小泉首相の冷静な現状認識と強力なリーダーシップが求められている。既に半年あまりの時間を浪費してしまった今、残された時間はほとんどないのである。

以 上  
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