2005年4月28日 VOL.1

白馬
「過剰流動性は消えない=ジワジワと進む資産インフレ」


 初回である今回は、「過剰流動性」(いわゆる金余り現象、ジャブジャブの流動性)と株式市場の関係について考えてみましょう。 結論から言うと、「過剰流動性」はなかなか消えそうになく、その結果、資産インフレが今後もジワジワと進みそうだ、ということです。 株式市場との関係で言えば、引き続き、不動産や鉄道など不動産価格や地価の上昇の恩恵を被る業種のパフォーマンスが良いのではないでしょうか。


 「過剰流動性」とは何なのでしょうか。ポイントは、「過剰」という言葉にあります。 何が何に対して過剰なのでしょうか。簡単に言えば、それは、マネーサプライが景気活動に対して過剰である、ということなのです。


 マネーサプライとは、個人や企業といった民間の経済主体が保有している現金や銀行預金のことを指します。 その総量が景気活動に対して過剰であるということは、経済において、資金がだぶつき、金余り状態にあるということです。 その結果として、過剰な流動性は、例えば、不動産市場、商品市場、株式市場などに流れ込むことになり、時として、不動産価格、商品相場、そして株価などを実態以上に持ち上げることになります。

[ チャート1: ]


 実際の過剰流動性は、今どのような状況にあるのでしょうか。 上のチャートは、日米のマネーサプライと日米のGDPとの比率をとった「マーシャルのK」と呼ばれるものです。 これが上昇すれば、流動性は過剰になる傾向にあるということです。 チャートをみれば、一目瞭然ですが、日米経済においては、2000年から2003年にかけて、「マーシャルのK」が急劇に上昇し、その後も、横ばいで推移しています。 「マーシャルのK」の上昇幅は、日本で株価バブルが起こった1980年代後半を上回るものであり、その意味で、世界的な金余り現象はまさに歴史的なものであると言えます。


 ただ、逆に言えば、こうした過剰流動性がひとたび縮小を始めれば、世界の金融・商品市場に大きな影響が及ぶ可能性が高いでしょう。 エマージング諸国の株価や商品相場、あるいは日米の不動産価格などが暴落するリスクもあるでしょう。


 そうした懸念はないのでしょうか。 最近1ヶ月の株式市場の動きをみていると、市場の一部では、既に、過剰流動性が縮小を始めるリスクが意識されているようです。 その理由は、米国においてインフレ率が上昇する懸念が強まっているためです。 米国でインフレの圧力が強まれば、金融当局は利上げを加速させ、その結果、銀行貸出の伸びが低下するとともに、過剰流動性も縮小するという発想が根底にあるのです。


 しかし、筆者は、米国のインフレ圧力が強いとは考えておらず、米国における金融引き締め(=利上げ)は、早晩、終了すると思っています。 その結果、世界的な過剰流動性は縮小しないとみています。


 米国におけるインフレ圧力がさほど大きくないと考えているのは、米国の製造業の価格支配力が、最近、著しく低下しているからです。 足元におけるインフレ圧力は、世界景気が絶好調にあることによる、ディマンド・プル(需要拡大)型のものではなく、中国が素材を爆食していることなどによる、コスト・プッシュ(コスト上昇)型のものです。


 従って、企業にそうしたコスト上昇を製品価格に転嫁できる力があってこそ、インフレが現実のものとなるのです。 言い換えれば、企業の価格支配力が弱く、たとえば、石油製品価格高や鋼材価格高を製品価格に反映させられないのであれば、大きなインフレは起こりません。 さらに言えば、製品価格にコスト上昇を転嫁できない分、企業の利益は圧縮されてしまいます。 その結果、企業が賃金や雇用を抑えることによってコストを吸収せざるを得なくなれば、これは、インフレを抑制する要因になります。


 以下のチャートをみてください。 米国の製造業では、素材価格の上がり方に比べて中間財価格の上がり方が鈍く、また、中間財価格の上がり方に比べて最終財価格の上がり方が鈍いのです。 その結果、価格比率は大きく低下しています。 米国の製造業は、川上のコスト上昇を川下の製品価格に十分に転嫁できておらず、苦しんでいるのです。

[ チャート2: ]


 こうした状況にあって、米国の金融当局は、早晩、利上げを停止せざるを得ないでしょう。 利上げを継続させれば、景気が失速し、株価が暴落するリスクすらあります。 そして、当局にはそうした冒険をするほどの余裕はないとみられます。 景気を失速させた場合、米国は財政再建の道を絶たれ、ドル安・金利高に巻き込まれる可能性があるからです。


 米国製造業の価格支配力の低下、これがキーワードです。 米国自動車業界の衰退といったニュースは、世界の過剰流動性が簡単には消えないことを意味していると受け取るべきでしょう。 日本の株式・不動産市場が、世界的な金余りの恩恵を得続ける構図は少なくとも、向こう1年は変化しないでしょう。

以 上  
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