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前回のレポートでは、 「重要なことは、交易条件(企業の販売価格と仕入価格の比率)の動きからみる限り、4−6月期、7−9月期の企業業績については、やや悪化するといった生易しいものではなく、ドスンと落ちるというイメージである。<中略>直感的には、企業の4−6月期決算報告では、予想外の業績悪化や先行きの業績下方修正のラッシュが起こる可能性があるということである。」 と書いた。
確かに、足元の企業業績があまり振るわないという状況に変わりはないだろう。海外経済も年初から4−5月までは減速感が強く、企業の売上が予想以上に伸びているとは考えられない。
しかし、市場のテーマは、足元の循環的な企業業績から、年後半の国内景気情勢にシフトしたとみられる。それは、年後半の国内景気が、当初予想されていたよりも明るいものとなる可能性が高まっているからである。外人投資家も、先行きの景気回復を期待して、日本株への投資をさらに積極化させてくる可能性がある。
年後半の景気が予想以上に回復することを示唆するデータとして、7月1日に公表された日銀の企業短期経済観測調査(通称、日銀短観)がある。同調査は、国内企業約1万社を対象に年に4回実施されている、信頼度の高いサーベイである。
今回の日銀短観で特に注目されたのは、企業の05年度の設備投資計画が大幅に上方修正されたことである。具体的に言うと、05年度の設備投資計画は、3月調査時点の前年度比2.2%減から今回の調査では同5.4%増に上方修正された。
5.4%増という数字はたいしたことないように聞こえるかもしれない。しかし、数字を侮ってはいけない。我々が重視しているのは、修正幅、あるいは修正率なのである。すなわち、今回みられたような修正は、修正幅(7.6%ポイント)の観点からすると、極めて大きい。過去2年間は、それぞれ3.2%ポイント、5.1%ポイントであったからである。
重要なことは、修正幅の大きさが、1989〜1990年度といった、いわゆる80年代のバブル期の終盤(8%ポイント強)にむしろ近いということである。指摘しておかなければならないことは、過去のデータをみる限り、今回にみられたような設備投資計画の大幅上方修正が行われたのは、このバブル期終盤しかなく、その場合には、9月、12月の調査において、更なる設備投資計画の上方修正が行われた、ということである。
確率論の問題ではあるが、今回の日銀短観からは、[1]05年度の設備投資計画が今後さらに上方修正される可能性が高い、[2]国内個人消費が足元堅調に推移していることからすれば、更なる上方修正の主役は、小売やサービス業になる可能性が高い、[3]05年度の設備投資額は、市場の平均的な予測(3−5%増)を大きく上回り、二桁の成長を達成する可能性すらある、といった点が示唆される。なお、短観の設備投資とGDPの設備投資のズレはそう大きくない。
いずれにせよ、日銀短観は、企業の投資意欲がバブル期のピーク時並みに高まっていることを示唆している。何が企業の設備投資意欲をここまで駆り立てているのであろうか。
日本経済のファンダメンタルズがバブル期並みに改善したわけではないことは明らかであろう。従って、企業が設備投資に前向きになっている理由は、過去2年間の業績回復の下でキャッシュ・フローが蓄積されてきたこと、と考えざるを得ない。
合理化努力や生産性向上によって利益を蓄積してきた企業は、財務リストラにある程度目処が立ったこともあり、ついに、設備投資の積み増しに踏み切りつつあるわけだ。株主からの圧力も設備投資を後押しする方向に働いている可能性が高い。株主の多くが、利益を配当の増加や借入れの返済に回すだけでなく、将来の利益拡大を目指した前向きな設備投資に使われることを望み始めたのであろう。
足元の企業業績が幾分振るわなくても、市場は、日本企業の設備投資拡大戦略を好感し、堅調に推移する可能性が高い。個人的には、今年の設備投資は、昨年までとやや異なり、ソフトウェア投資、あるいは、工場、倉庫の増設、オフィスや店舗の拡大などが中心になるとみている。
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